「ヨーグルト専門店モーニング」は、ひとりのお母さんが作ったデザートから始まりました。
一人っ子のりっちゃんのお母さんは、いつもニコニコ明るくて、周りの人を喜ばせるのが大好きなやさしいお母さん。りっちゃんのためにお母さんは、体にやさしい自然のものだけを選んでお料理します。お母さんの手作りのおやつはとってもおいしくて、りっちゃんのお友達にも大人気。
お家にいらしたお客様をおもてなしするのが大好きなお母さんは、いつも得意の手作りレシピでお客様をおむかえします。そんなある日に作ったおもてなしのデザートは、お客様に嬉しい驚きをあたえる、すてきなデザートでした。
透明なオールドファッショングラスいっぱいに注がれた、真っ白なもの。その上にこぼれんばかりのフルーツ。お客様は、まずフルーツのみずみずしさを楽しみ、次にそのグラスの中の真っ白な物、ふんわりやさしいムースにスプーンを通します。ムースはほんのりと酸味を含んだ、やわらかな味。そしてグラスの中ほどまで食べかけた時、その真っ白なものは、とろりした舌触りのヨーグルトに変わっているのです。
当時ヨーグルトといえば、ゼラチンで固め、砂糖をたっぷり入れて酸味をごまかした紙カップ入りのヨーグルトが子供たちの給食に出てくるくらいのものでしたが、お母さんは、自然のままのプレーンヨーグルトをふんだんに使って、体にやさしい、おいしいデザートに仕立てたのでした。
お客様は大喜び。ほとんど食べたことのなかった酸っぱいだけだと思っていたヨーグルトが、こんなにおいしいなんて!
体によくて、ちょっと工夫すればぐんとおいしくなるヨーグルト。お母さんは、もっとたくさんの人にもヨーグルトのおいしさを知って欲しいと思いました。りっちゃんのお父さんが仕事場にしているガレージの一角に置かれた小さなお菓子のショーケース。お母さんは家のキッチンいっぱいに作ったヨーグルトのケーキをショーケースに並べ、手書きの値札を添えました。
あの日お客様を喜ばせたデザートには、「フレッシュカップ」と名前をつけました。
「近所の人たちが喜んでくれれば」程度にはじめた小さなお店の、たった一個のショーケースに並べたフレッシュカップとヨーグルトのケーキたちは、お昼前には一つも残らないほど大人気。来る日も来る日もたくさんの人が、お母さんの作ったフレッシュカップとヨーグルトケーキを求めにやってきます。お母さんは一生懸命作りましたが、とても間に合いません。買えずにがっかり帰っていく、たくさんのお客様のために、お母さんは、いっしょに手作りをお手伝いしてくれる人を探すことにしました。